JIS2004は字体を規定しない ― 2005年08月11日 06:49
前回触れたように、Windows Vistaに搭載されるフォントをめぐって、誤った記事が流布しています。典型的な誤解は、「JIS2004 (JIS X 0213:2004)を採用することで印刷標準字体に対応する」というものです。しかし既述の通り、JIS2004を採用したからといって印刷標準字体と同じ字体になるとは限りません。
規格を読めば、世間のニュースサイトの誤りが分かります。JIS X 0213を見てみましょう。
1. 適用範囲
この規格は、図形文字及びそのビット組合せを規定するもので、用途、個々の図形文字の具体的字形設計などは、この規格の適用範囲とはしない。
付属書6(規定) 漢字の分類及び配列
ここで示す例示字体、部首、画数、音訓などは、一般に用いられている漢字とこの規格でビット組合せを規定する図形文字との対応を示し、文字の同定を容易にするためだけに用いるのであって、漢字の字体・字形、部首、画数、音訓などに対して、何らの制限をするものでもなく、また、いかなる基準を与えるものでもない。
(強調引用者)
これを読めば、JIS2004が何らかの字体規範の使用を規定したり推奨したりするものではないことが明らかでしょう。例示字体が変わっても、それは「この字体でフォントを設計しなさい」という意味ではないのです。
これはJIS2004だからというのでなく、文字コードというものが一般にそういうものだからです。文字コードは、文字の符号化表現(ビット組合せ)を定めるものであって、字体を決めるものではないということです。
(なお、印刷標準字体に則ってフォントを設計するのが良いかどうかはまた別の話です。文字コード規格としては「お好きにどうぞ」としか言いようがないでしょう)
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