規格の読み方2007年10月30日 23:31

前の記事を書くために久しぶりに97JISを読んだのですが、ああ、やっぱりこれは1997年の規格なんだなということを感じました。

というのは、規格が書かれた当時の常識や技術的な背景というもの (それらの多くは現在でも通じるにしても) が、規格の文言の裏に透けて見えるわけです。

規格というのは、文面に書かれたものが全てであるかのように読み、それできちんと意味が通じるのが良いわけです。というのは、異なるベンダの実装者が別々に読んで実装したものが、きちんと相互運用できてほしいから。けれどもその一方で、書かれた文書はやはりその時代の産物であることは免れ得ない。してみると、深く理解しようとしたら、書かれた当時の事情を知るに如くはない。

時代背景や常識というものをまるっきり無視して、言葉尻だけをとらえてあげつらうのは、(規格の草案を練り直すときには有益かもしれないとしても) 現実世界への適用においてはあんまり意味がないわけです。

そういうわけで、JISの「解説」はもっと参照されて良いのではと思います。規定がなぜそうなったかを知る手がかりになるからです。97JISやJIS X 0221-1:2001の「解説」なんかは誰でもいつでも参照できるように整備されていてほしいと思います(そういえばX0221の新しいのはもうすぐでしたっけ)。JISCのサイトでは「解説」まで含めてくれないのですよね。残念。

コメント

_ かつみ ― 2007年10月31日 06:55

工業規格の適合/不適合の解釈のはなしに「時代背景や常識」をもちこむとは驚きました。
航空機の部品だったら墜落事故がおきます。

草書ではしんにょうは無点です。
草書フォントは包摂規準にある「1点」または「2点」の形に書かないとJIS規格不適合だと、やのさんはおっしゃりたいのですか?

_ かつみ ― 2007年11月02日 09:13

この「規格の読み方」という項、結局何をおっしゃりたいのかわかりません。
----「規格の一部ではない」と明記されたJISの「解説」や、誰がどうとでも主張できる”時代背景や常識”を基に、”現実世界への適用において”不都合ならば、規格本文の文言の一部は無視してよい----
ということでしょうか?

_ とおりすがり ― 2007年11月02日 14:29

この人、技術バカ?

_ かつみ ― 2007年11月03日 09:50

やのさんは過去、
 「JIS2004は字体を規定しない」 ― 2005年08月11日 06時49分18秒
において明快な主張をなされています。
私はこれを読んで「よくぞ言ってくださった」と喜んだものです。
しかし、これには嫌がらせと思える無意味なコメントが多数つきました。
何かの圧力で意見を封殺されてしまったのであれば残念なことです。

_ かつみ ― 2007年11月04日 18:04

印刷業界は、例示字体と包摂規準を”基準視”してJIS規格を限定的に解釈運用しているようです。活字字形に”朝日文字”を無制限に生み出さないためと思われます。
そして今のところ彼等は明朝体とそれと字体骨格を同じくするゴシック体しか関心がないかとも思われますので、これでこと足ります。

しかし今やデジタルフォントは金属資源を使いません。
かつて存在しながら資源不足や過大設備負担の問題から衰退した清朝宋朝行書草書楷書そして明朝体とは独立した字体としてのゴシック体などが復活する可能性は高まっています。
その時フォントデザイナーは各書体の伝統に則ってデザインするはずで、明朝体の例示字体と包摂規準に従えというのは、ウソ字を作れというのに等しいことです。(朝日文字が伝統から外れるのでウソ字なのと同じです)
明朝体万歳の狂信者は活字字形に明朝体とは異質のものが存在することに抵抗するかもしれませんが、JIS規格が関わるはなしではありません。

やのさんは一部業界の自主規制にすぎないものを以ってJIS規格そのものを一部文言を無視してまで解釈しようとする根本的な誤りを犯しています。
これは私の意見です。
2005年08月11日以降なにがあったか知りませんが、これについて反論がおありならはっきりとおっしゃってください。

_ ttk ― 2007年11月08日 01:09

「JIS2004は字体を規定しない」に嫌がらせと思える無意味なコメントが多数とのこと→
どんなだったっけ、と思って見ようとしたら、コメントスパムの嵐で読めなくなっていました。残念です。
もし可能でしたら、旧い記事へのコメントは凍結するなど対策していただけるとうれしいです。

「印刷業界は、例示字体と包摂規準を”基準視”してJIS規格を限定的に解釈運用」→
「印刷業界は、例示字体を“基準視”して、包摂規準の許容した揺らぎを無視してJIS規格を限定的に解釈運用している」
というべきでなないか、と思いました。だから、例示字体の変更が“混乱”になる。

「その時フォントデザイナーは各書体の伝統に則ってデザインするはず」→
実際に起こっていることはそうではないような。楷書体のフォントの食偏が康煕字典体風だったり。

「一部業界の自主規制」→
自主規制だという自覚があればまだいいのですが、「JISが暗黙に規制している」と勝手に一部業界が解釈しているのが現状。

_ かつみ ― 2007年11月08日 19:12

私は業界外の者ですので「自主規制」という好意的推測をするに留めます。
どこかのblogだった掲示板だったか、楷書体のフォントなのに、なぜ康煕字典体風にデザインするのか?という問いに
「楷書体フォントではない、明朝活字体の楷書風フォントだ」と答えていた人がいたように覚えています。
モリサワ欧体楷書、リョービイマジクス松慶行書体のような例は今のところ少数派ですが、本格的に字体字形を研究する人が増えれば、状況は変わるとおもいます。

明朝体包摂規準の”基準視”、この呪縛からも解放されてこそ、明朝活字体のXX風フォントという奇妙な物が淘汰されるのだと信じます。

_ ttk ― 2007年11月10日 01:37

示唆に富むコメントありがとうございます。「明朝活字体の楷書風」とは笑ってしまいました。明朝体包摂規準の”基準視”とおっしゃる意味も理解できました。
明朝体の特定デザインに固執し手段と目的を勘違いしているようなチマタで見受ける文字コード論には、貧しさを感じるとともに絶望感を覚えますが、「本格的に字体字形を研究する人が増えれば、状況は変わる」とおっしゃる明るい展望に深く同意します。

_ かつみ ― 2007年12月01日 10:03

どんな反論があるのかと楽しみにしておりましたが、「黙殺」には失望しました。
小形克宏さんが代わりに反論してくださっても結構です。
「もじのなまえ」2004-11-05 の ttk さんとのやりとりをみていると、やのさんと同じような考えをお持ちのように思えます。
(「樋」の印刷文字はどんな書体であれ「一点しんにょうはペケ」というのですからもっと過激?)

_ ttk ― 2007年12月02日 01:29

「黙殺」とは、私のことかしら?
「もじのなまえ」2004-11-05に書いたことは、「ogwataさんの仰るとおりに読み取ると」という相手の土俵で立てた論であり、本音では「書体が違えば字体が違うのは当然」という漢字の“常識”の方が正しいと思っています。それにこっちは「表外字体表」の扱いの話であり、JISとは話が別でしょう。また、やのさんには共感することもあるけれども、そうでないこともありますよ。

_ かつみ ― 2007年12月02日 10:02

>「黙殺」とは、私のことかしら?
ttk さんのことではありません。「反論」とは「2007年11月04日 18時04分53秒」の、やのさんに対する私の発言の最終行のことです。
>それにこっちは「表外字体表」の扱いの話であり、JISとは話が別でしょう。
そのとおりです。
--「規格が書かれた当時の常識や技術的な背景」だけで規格の適合不適合は判断できない、「表外字体表」などの新しい「常識」を加味してはじめて判断できるのだ。--
このように、やのさんの主張は読み取れます。「一点しんにょうの樋」についての小形さんの意見はこれになじむものと思いました。
もし小形さんが「一点しんにょうの樋」楷書フォント、「無点しんにょうの樋」草書フォントはJIS不適合ではない、とはっきりおっしゃているなら私の誤りです。
JIS適合だが「表外字体表」によって実質上禁じられる?というはなしであれば、小形さんのところで別の議論をします。

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