フォントの字体変更は文字コードの話題か?2007年10月30日 00:03

JIS X 0213:2004が (包摂の範囲内で) 例示字形を変更したために、この変更に追随して字体設計を変更するフォントがいくつかあるようです。「辻」のしんにょうが1点か2点か、というのはこのレベルの話です。さて、これは文字コードの話題でしょうか?

文字コードとは、文字とバイト表現との対応を規定するものです。あるバイト表現に対応する文字がどのような字体をとるかは、包摂の範囲内において、設計者の方針次第です。文字コードの問題ではありません。JIS X 0208/0213では、しんにょうの点が1点か2点かは、文字コードとして区別しないことが明記されています。

なので、「辻」のしんにょうの点の数の如き問題は、文字コードの話題ではありません。フォントの話です。文字コードについて雑誌記事などを書く人におかれては、是非こうした区別に敏感であってほしいと思います。

補足すると、字体変更が包摂規準の範囲を越えて行われると、文字コード規格に適合するかどうかの問題が生じるので、文字コードの話題ともなり得ます。

コメント

_ おがたかつひろ ― 2007年10月30日 01:47

なんとなしに呼ばれたような気がしたのですが、本来であれば矢野さんのおっしゃるとおりだと思います。鴎や鴬などと違って、しんにょうの点の数やソとハの違いなど包摂範囲内なのですから。
しかし、矢野さんは本当にそれですむとお思いですか? もしもそうならば混乱などはおきませんが、ぼくには自信がないのです。ずっと考えているのですが、ぼくにも分からない。
もしもこれについて所感をお持ちなら、ぜひお聞かせください。

_ かつみ ― 2007年10月30日 02:28

そもそもJISが「個々の図形文字の具体的な字形設計などは、この規格の適用範囲とはしない」(1.適用範囲)といっているからには、フォント作成者が包摂規準を無視して字形を作ろうとも、文字コードの話題にならないと思います。
私は0点しんにょうフォントを作ったところで文字コード規格そのものとは関係ないと考えますが。

_ やの ― 2007年10月30日 14:21

おがたかつひろさん、
フォントを変更することで混乱が生じるのなら、それは「フォントの問題」 (文字コードの問題ではなく) として論じられるべきではないでしょうか。ということを言っているだけです。フォントの変更が何か問題をもたらすという主張自体について云々しているわけではないのですよ。

_ やの ― 2007年10月30日 14:28

かつみさん、
それはちょっと面白い問題提起なので、次の記事でそれに関して書きます。

_ おがた ― 2007年10月30日 15:32

なるほど、そういうことでしたか。でもそれは実装が規格に基づく以上、モノゴトを左側から見るか右側から見るかだけの違いではないでしょうか。

_ かつみ ― 2007年10月30日 20:59

問題提起でもなんでもなく、規格を素直に解釈しているだけです。
さらにいえば、「6.6漢字の面区点位置の解釈」において
「包摂規準は....漢字の字体そのものに対しては、いかなる"基準"を与えるものではない」
「例示字体及び包摂規準は....書体にいかなる"基準"を与えるものではない」
と、くどいほど言っているにもかかわらず(つまり包摂規準は字体設計の基準ではない)、どうして「包摂の範囲内において字体をつくらないとJIS規格に適合しない」という結論が出てくるのか不思議でなりません。

_ やの ― 2007年10月30日 21:33

ええと、そう結論を焦らずに。

_ やの ― 2007年10月30日 21:40

おがたさん、
実装が規格に基づくというのはそのとおりですが、文字コード規格が関与するのは「「辻」という文字がどのような符号化表現に対応するか」についての実装であって、「辻という文字をどのように出力するか」の実装ではないですよね。

_ おがた ― 2007年10月31日 01:53

規格を規格自身として(同時に実装を実装自身として)考えようとされる矢野さんのお立場はよく理解しているつもりですし、じつのところ僕もそれには共感します。
ここで応酬したことで、自分でも深く意識していなかったことを意識化することができたのですが、ぼくがなぜLeopardのヒラギノを文字コードの問題として考えていたかというと、JIS X 0213の2004年改正、とくに例示字体変更が文字コード規格としてやってはいけないことをやり、そしてそれを実装したのがVistaでありLeopardであったからという理由でした。
2004年改正の目的は「例示字体を変えることでフォントの字形を変更させること」だったと考えています。しかし言うまでもなく例示字体に規範性はありませんし、あるべきではありません。そうした自己撞着を、各社がどのように実装するか、それを見ることは、ぼくにとっては「文字コード問題」だということです。
ただ、やはり規格と実装は表裏一体ですので、あまり区別しても意味はないとも思うのですが。しかし矢野さんのおっしゃることはよく分かります。

_ おがた ― 2007年10月31日 02:05

すいません、まだ舌足らずだったかもしれません。ぼくにとっては、Windows VistaやLeopardの実装が、どのように規格にはねかえっってくるかが問題なのでした。

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